2011年10月31日月曜日

潜入ルポ ヤクザの修羅場

潜入ルポ ヤクザの修羅場
鈴木 智彦著
文春文庫

著者は極道専門のフリーライター。怖いもの見たさで読んでみたが、色々考えさせられる内容の濃さだった。



著者は、やくざ専門誌「実話時代」編集部にかつて所属していた。
それから極道系専門のライターとして数々の本を出している。

派手な修羅場の連続を大げさにあおって描いた本だと思ったが、全く違った。
確かに「修羅場」はたくさん出てくるが、取材者としてヤクザとともに生きてきた著者の
半生記のようだった。

もともと著者はカメラマン志望で、アメリカに滞在していた時知り合った元組員に、
ヤクザの写真を撮ればいいと勧められ、それなら、専門の雑誌社に入社したら手っ取り早いと
この仕事をするようになった。

歌舞伎町。本場の町。
そこの「ヤクザマンション」と呼ばれる、大部分が組関係者で占められるマンションに
居を構えた著者。
懐に自ら飛び込んでいく勇気、「玄関開けたら2分で現場、ラッキー」だかららしい。

恫喝・恐喝が日常茶飯事の著者は淡々と書いているが、修羅場の連続だった。
ただ、読んでいるこちらは現実感に乏しいためか、映画を見ているような感じで、
不思議と怖さは感じなかった。
付箋に「PM4時、○○組の××様より電話あり、内容=殺すぞ」とか、
ポン中の方からの電話で「いまマイケル・ジャクソンと一緒なんだ」
という下りは思わず吹き出してしまったほど。

恫喝されている時も、
「意識を取材目線に変えるのがいい。何かに使えると考えメモを取っている」
という著者のたくましさも怖さを中和しているのだろう。

愚連隊の帝王・加納貢の哀しき晩年の面倒をみたり、取材の拠点を関西に移し、
盆中に潜入したりと色々な経験をしてきた著者。
きっと、本に書けなかった本当の修羅場や苦労ももたくさん経験したのではと推測できる。

芸能界の黒い交際・暴力団排除条例制定の流れにより「社会的弱者」になってしまったヤクザたち。
今が彼らや彼らを取り巻く著者のような取材者・彼らに頼って生きてきた人たちの
大きな転換期なのであろう。

1 件のコメント:

  1. はにぃさんの書評を見て、今、この本を読み始めました。期待通りの面白さです。

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