2012年4月24日火曜日

おやすみラフマニノフ

おやすみラフマニノフ
中山七里著
宝島社文庫

時価2億円のチェロが完全密室の部屋から忽然と姿を消した!音楽大学を舞台にした音楽ミステリー。音楽を聴くより音楽に浸れる・・・かもしれない



名器ストラディバリウス---時価2億円もするチェロが、愛知音大の楽器保管室から姿を消した!
理事長の孫娘で、才能にも恵まれている柘植初音が定期演奏会の練習用に借りていたものであった。
バイオリン担当の城戸昌は、授業料も滞納しバイトと練習に忙しい中、事件に巻き込まれていく。
「さよならドビュッシー」で、父は検事正、自身も司法試験トップ合格するも、現在は愛知音大で講師をする天才的ピアニストの岬洋介が探偵役を務める音楽ミステリー。
(登場人物が重なるだけで、続き物ではない。)

著者は男性で、「音楽の通信簿は常に「2」だった、ピアノはいまだに触ったことがない。見たことがある程度」らしい。
長男がピアノを専攻しているため、そこから情報を得ているという。


一つの事に情熱をささげる主人公の話に、夢中になったことはないだろうか。
古くは「あしたのジョー」「エースをねらえ!」などのスポ根漫画、「ガラスの仮面」等の演劇、その他バレエの話、料理や囲碁・将棋の話もあった。
主人公が努力しながらも成長していく物語に、その分野の「うんちく」を織り交ぜながら続いていくというストーリー。
私は、そういう話が大好きで、夢中になってしまう。
そして、すぐはまる。
この本も事件が起こり犯人がいるのだから、ミステリーといえるのだが、音大生の苦悩と成長を描いたスポ根系の物語なのである。

こう見えても私は、幼稚園の頃から7年間ピアノを習っていたのだが、残念ながら才能のかけらも見当たらなかった。
いまでも、聴くのは好きなのだが、歌も音痴で楽器も演奏できない。(ピアノすら弾けない。)
クラシック音楽を聴いても、楽しむことはできるのだが、情景が浮かぶこともなく、ましてや「あっ、ここ主題部分だ。弦楽器が主導権を握っている。長調だ、短調だ。」なんてわかるわけがない。(先生ごめんなさい。)

しかし、この本の中でなら、そういうことが丁寧に描写されているので、音楽を聴かずに「ふんふん、なるほど。」とか「素晴らしい演奏だ!」と音楽を味わうことができるのである。
著者が音楽家ではないというのが信じられないくらい、演奏シーンは心を揺さぶる。
もともと音楽的素養がある方は、実際の音楽を聴いた方がいいに決まっている。
でもそういう能力のない私は、この本で感動を味わうのである。

読み終わった今でも、高揚している。
音楽を聴くより、音楽に浸ることができたいい本だった。

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