2012年7月5日木曜日

別海から来た女 木嶋佳苗悪魔祓いの百日裁判

別海から来た女 木嶋佳苗悪魔払いの百日裁判
佐野眞一著
講談社

佐野眞一氏が書いた木嶋佳苗事件のノンフィクション。

この本は、ノンフィクション作家の佐野眞一氏が、木島佳苗の出身地・北海道別海町で関係者を取材するところから始まる。
曾祖父も祖父も、郷土の名士であり、別海町では木嶋佳苗がエリートであった事がよくわかる。

高校時代にボランティアサークルで一緒だった同級生は、「お年寄りには本当に優しかった」と証言する。
それも木村佳苗の一面なのだろうか。

そして著者は裁判を傍聴し、木村佳苗に斬り込んでいく。

裁判で明らかにされた、「全日本愛人不倫クラブ」「妊婦系サイト」「ぽっちゃり系サイト」等で、
高い代金と引き換えに売春を繰り返す木嶋佳苗は、哀れを通り越して、笑えるくらい悲しい。
そんな「ほれぼれするほどタフで手強い史上最強の女犯罪者である」木嶋佳苗に、著者は徒労感を感じるのである。

木嶋佳苗に翻弄された男たちの愚かさと滑稽さもまた、裁判によって浮き彫りにされている。
睡眠薬を飲まされ記憶を失った後も、木嶋佳苗と付き合い、何度も記憶を失ってしまう被害男性たちには本当に驚いてしまう。
事件当時80歳だったある男性は4度も意識を喪失して、やっと少し疑問を感じるのである。

著者も述べていることだが、この木嶋佳苗の一番の不可解さは、「子供が積み木でも崩すように、あるいはゲームに飽きた中学生がリセットボタンでも押すように、相手をいとも簡単に目の前から消していること」である。
幼く、短絡的でもなさそうな木嶋佳苗が、なぜお金だけむしり取って逃げるだけではなく、人を消すことまでしたのだろうか?そこが私の最大の疑問点だったのだが、やはり理解することは無理なようである。

先日読んだ「毒婦」 は、女性目線で木嶋佳苗を観察し、理解出来ず戸惑う著者に共感できる本だった。
この本も鋭い切り口の著者らしい、興味深い本である。
ただ、出版の関係で著者の持ち味である丹念な取材が時間的に限られていたのか、物足りなさを感じたのが少し残念だった。

この事件に関して、一番鋭く突いているのは中村うさぎさんだと思う。
是非、丸ごと一冊「中村うさぎから見た木嶋佳苗事件」の本を書いて欲しいと熱望する。

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