2012年9月5日水曜日

女中がいた昭和

女中がいた昭和
小泉和子編
河出書房新社

メイドもいいけど女中もね♪



女中さん、メイドさん、お手伝いさん、家政婦・・・
メイド服のフリフリ可愛いのもいいが、女中さんの着物に白い前掛けという抑圧されたような美しさも憧れる。
家政婦というと、TVの影響で覗き見とか無表情の怖いイメージが浮かんでしまう。
今はお手伝いさんという言い方が一般的だろうか。

その中でも絶滅したであろう女中さんについて書かれたこの本を読んでみた。

大正~昭和初期は、衣食住が洋風に変わる過渡期に当たる。
衣は着物だけでなく洋服の洗濯・アイロンがけをしなくてはならず、食も器や調理器具の種類が増え、住環境も洋間に絨毯・カーテンを設置するなど、和洋二重生活により生活が煩雑化していく。
その頃の家事は、技術を必要とし神経や気を使うという、過酷な時代だったのだ。

そのため、戦前までは負担の大きい主婦を補佐するため、特に裕福ではない家庭でも女中がいることは珍しいことではなかったという。
本書は、主婦一人ではこなしきれないほど複雑繁多だった家事を補うため雇われた女中について、仕事内容・環境など様々な角度から複数の専門家が解説した生活史である。

女中の仕事のやり方や心構えを説いたマニュアル本「女中訓」は、雇い主が女中に読ませたり、主婦が女中の指導や自分の家事マニュアルとして読まれていたという。
その中には、掃除や炊事を始め家事全般のやり方が細かく書かれていて、お客様への応対は丁寧に、衛生や看護の知識も必要、雇い主には忠実で、暮らし方は都会流でも田舎気質を忘れずに・・・ってそこまで要求するのかと驚く。

雇う側も雇われる側も、どんな人に当たるかは運も大きいなと思う。
家族のように温かく迎えてくれるご家庭なのか、ヒステリックにこき使われるのか。
女中の方も、よく気がつく働き者もいれば、盗み癖・怠け癖のある人もいただろう。

この時代は女中さんに限らず誰もがそうだったのだろうが、休みもほとんどなく朝から晩まで働いて大変だったのだなぁと思う。
しかも女中さんは雇い主と同居しているため、肉体的だけでなく精神的にも休まる暇がなかっただろう。

そんなプライバシーもない、同居しているのに家族ではない存在の女性--女中さん。
昭和30年代に急速に減っていったという。

女中さんという響きに惹かれる私には、とても魅力的な一冊だった。

メイド喫茶もいいけれど、本書を監修されている小泉和子さんが館長をされているという昭和のくらし博物館 、いつか行ってみたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

閲覧ありがとうございます。コメントしてくださったらうれしいです。