2012年10月10日水曜日

神去なあなあ日常

神去なあなあ日常
三浦しをん著
徳間書店

林業見習いの青年が見た、山の四季折々。ゆったりした時間が流れている村の暮らしに癒される一冊。



高校を卒業したら「フリーターにでもなろう」と気楽に考えていた 平野勇気 18歳。
母親と先生の策略で、生まれ育った横浜を離れ三重県の山奥「神去(かむさり)村」へ行くことになってしまった。
本書は、そこで林業見習いとして働き始めた 勇気 の成長物語である。

「これは主人公が成長していく職業小説だ」
「三浦しをんさんの小説なら安心できる」
そう思いながらこの本を購入し、ストレスが溜まった時に読もう、ヘビーな本を読んだ後に読もう・・・気づいたら積ん読本の山に紛れ込んでいた。

引っ張り出して読んでみると、思っていた通りの成長物語で意外性はない。
それでもやっぱり面白い。
登場人物は魅力的だし、林業のトリビアも興味深い。
クスクス笑え、感動して泣ける小説。
さすがしをんさんだなぁ、と改めて思う。

自然豊かな村の様子、最初は「ウザイ」けれど仲良くなれば温かい村の人々、そして信仰の対象である神秘的な山。
読んでいくうちに、都会とは違うゆったりとした時間が流れている神去村の暮らしに癒されていく。
また、お祭りの部分は男たちの気迫が充満し、ハラハラドキドキしながらも神聖な気持ちになる。

主人公の少年は頼り無さ過ぎるが、山を自由に駆け回る村の男たちが逞しく魅力的に描かれている。
そしてそれを見守る女たちはもっと強い。

影響されやすい私が、もし男子中学生だったらこの本を読んで「オレは山の男になる!」と林業を目指したかもしれない。
もし女子中学生だったら、「こんなかっこいい男たちを守る強い妻になりたい!」と願うだろう。
人生甘くない、厳しい面も沢山あると知ってしまった私は、ちょっと歳をとりすぎてしまった。

本棚に戻し、安心したい時にまた再読しよう、神去村の人々はきっといつまでも変わらぬ温かい気持ちで待っていてくれるだろうから。


※様々な職業にスポットを当てた三浦しをんさんの小説は、読みやすい文章で中学生くらいの子供たちにぜひ勧めたいような内容だ。
しかし、いたいけな少年少女たちに読ませたくない表現がいつも出てくるのが残念に思う。
本書でも、何も主人公の下半身を疼かせなくても、「やりたい」と叫ばせなくても若者の恋心は十分表現できると思う。
世間には有害な描写や映像が溢れているので、中学生達はこれくらいなんとも思わないかもしれない。
(自分のことは棚に置き)それでも気になる私は、考え方が固すぎるのだろうか。

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