2013年11月23日土曜日

さいはての彼女

原田マハ著
角川書店


 「人生をもっと足掻こう!」頑張りすぎて疲れてしまった彼女たちの再生。原田マハさんの元気を与えてくれる短編集。




「さいはての彼女」
25歳で下着の通信販売の会社を起業した主人公の鈴木涼香。
社長としてバリバリ頑張ったお陰で業績はいいのだが、恋に破れ部下に当り散らすという荒んだ生活を送っていた。
久しぶりに休暇を取り、沖縄で優雅な日々を過ごそうと思い立つ。
しかし手違いか嫌がらせなのか、秘書から受け取ったチケットはなぜか北海道、それも女満別行きだった。
そこで、「サイハテ」という名のハーレーに乗っている凪と偶然出会う。
凪は、耳が聞こえないのだが、前向きでいつも明るく、彼女の周りには笑顔が絶えない。
彼女と旅をするうちに、だんだん涼香の心も癒されていく・・・

「旅をあきらめた友と、その母への手紙」
失恋・失業した女が一人旅へ出かけ元気を取り戻す。

「冬空のクレーン」
大手都市開発企業で大規模な案件を抱えている女性が、北海道へ逃避し、鶴やタンチョウレンジャーに出会う。

「風を止めないで」
夫をハーレーの事故で失った凪の母が、一人の男性と出会いときめきを思い出す。

本書は、以上4編が収められた原田マハさんの短編集である。

「都会での仕事や生活に疲れた女が旅をして自分を見つめ直す」そんなありがちなパターンである。
都合よくいい人ばかり出てくる話である。
しかし、「私」の視点から終始落ち着いたトーンで語られるこれらの短編は、一味違う。
旅先での風景、出会う優しい人々、少しずつリフレッシュしていく彼女たち・・・
ああいいなぁ、と素直に思える話ばかりなのだ。

「人生を足掻こう」
「いい風が吹いています。この風、止めないでね。」
など、心に染み入る文章が散りばめられ、ひねくれたこの私でもほっこり温かくなってくる。

パワフルに頑張っていて強そうに見える女性でも、ふとしたことで心が折れる。
体型は太めだが、別にパワフルでも強くもない私なんかしょっちゅう心が折れている。
折れまくりの人生である。
細かいことにこだわらず、もう少しおおらかに生きたら楽になるのにと思いながら、グヂクヂ悩むことも多い。
本書を読んだからといってすぐに心が強くなれるわけではない。
けれども、「大丈夫だよ」と優しく背中を押され励まされてる気持ちになれる一冊だった。

※「さいはての彼女」と「風を止めないで」に登場する耳が不自由な凪が、明るくとても魅力的に描かれている。
この子いいなぁ、彼女を主人公とした長編小説が出版されないかなぁと思う。

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