2014年2月5日水曜日

いとみち

越谷オサム著
新潮社 

「おがえりなさいませ、ごスずん様」津軽弁のメイドさんが迎えてくれるメイド喫茶。こんなお店があったら行ってみたい!!



かわいいメイドさんに会いたくて、メイド喫茶に行ったことがある。
そこは、観光客や冷やかしの客など一人もいない、お一人様の男たちで満員な、だけどとても静かな異次元の空間だった。
時折ベルでメイドさんを呼んで、注文すると同時に一言話しかける。
それが終わると、じっと机を見つめる。(美少女フィギュアを見つめている人もいた!)
彼らはゆっくり飲食しながら次に何て話しかけようと考えていたのだろう、しばらくするとまたベルを鳴らして・・・・
そんな光景が静かに繰り返されていて、場違いな私はいたたまれなくなってしまった。

しかも、メイド服を見たかったのに、キャンペーン中でメイドさん達は巫女さんの扮装だった。
それ以外なんの趣向もなく、これじゃぁただのちょっとお高い喫茶店だ!とがっくり来てしまった。
メイドさんに「萌え萌えキュン」とLOVE注入してもらいたかっただけなのに。
やっぱり本場秋葉原の観光客向けメイド喫茶に行かないとダメなのかもしれない。

秋葉原からは遠く離れているけれど、ぜひ行ってみたいと思うのが本書「いとみち」に出てくるメイド喫茶「津軽メイド珈琲店」だ。

主人公の いと は、高校1年生。
津軽三味線の名手でもある祖母に、修正不可能な古典的な津軽弁を刷り込まれているため、濃厚な津軽弁を話す今どき珍しい女の子である。
いとちゃんは、人見知りで口下手で引っ込み思案。
そんな性格を変えたいと思い(ついでにメイド服にちょっぴり憧れて)、青森市にあるメイド喫茶でアルバイトを始めた。
ところが、メイドさんの決め台詞「お帰りなさいませ、ご主人様」がどうしても言えず、「お、おがえりなさいませ、ごスずん様」と訛ってしまうのだ。

何もないところで転び、オムライスにケチャップで絵を描く「萌えオム」は緊張してなかなか上手くできず、お客様との交流もまともにできない。
そんな いとちゃん だけど、おばあちゃん仕込みの津軽三味線はなかなかの腕前で、津軽人らしく「じょっぱり」(頑固で負けず嫌い)な面もある頑張り屋さんだ。

おばあちゃん、お父さん、やっとできた高校の友達、それぞれ事情を抱えているバイト仲間、そしてメイド喫茶にやってくる消極的な男性客たち。
たくさんの人たちに見守られながら いとちゃん は成長していく。

初々しい いとちゃん に、冒頭から萌え萌え状態になってしまった。
こんなに愛らしくて、笑えてじーんときて楽しめる小説。
このまま終わってしまうのはもったいないと思ったら、既に「二の糸」という第2作が出ているらしい。
またぜひ いとちゃんに会いに行かなくちゃ!!
「おがえりなさいませ、ごスずん様」の決め台詞練習しながら待ってってね♪
あっ、私は女だから「ごスずん様」とは言ってもらえないんだった(><)

※おばあちゃんの言葉を正確に理解できる者は10人に満たないそうで、おばあちゃんのセリフは「◇ω◆=?」といった記号で表され、巻末に五十音対応表までついていた。
後に続く返事などから意味は推察できるのだが、この楽しい心遣いにニヤリとしてしまった。

※もっと若かったらメイド喫茶で働きたいなぁと憧れてしまった。
それでふと思ったのだが、世のお父様方は娘が「健全なメイド喫茶」で働きたいと言ったらどう思うのだろうか? 

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